先の大戦終結から70年の節目の年である2015年は、先行き不安を感じさせる幕開けとなりました。これまでになく不安定で不透明な国際社会。深刻さを増すテロリズムや山積する地球規模の課題の前で、我々は身を守るために、内向きになりがちですが,自信を持って未来を切り拓くため、これまで以上に人類の叡智が問われていることを実感します。
このような時代だからこそ、国境を越えて人間同士の友情や信頼を築く努力を推し進めることが大切です。異なった社会に住む人間同士が交流し、相互理解を深めることの今日的意義は計り知れません。とりわけ、これまで長きにわたり交流を積み重ねてきた日本人とアメリカ人の信頼関係は、日米両国にとって、かけがえのない財産であり、国際社会の将来に向けての価値ある公共財です。
私はこの度、公益財団法人国際草の根交流センターの理事長に就任いたしました。外務省時代には、米国での三回の勤務を含め、様々な場面で日米交流の実務に携わってまいりましたが、その経験を通じ、日本人とアメリカ人は相互理解を深めるのに最もふさわしい相手であることを確信しております。1841年にジョン万次郎とホイットフィールド船長とが出会ったとの史実は「センター」の活動に大変な重みを与えています。以来日米両国は、様々な試練に遭遇してまいりましたが、その都度困難を乗り越え、今や価値観を共有し、強固な信頼関係を築き上げるに至りました。理事長に就任したこの機会に、日米交流のかけがえのない価値に改めて思いを致し、日米国民間の相互理解が更に深まることを念じ、「センター」の活動のさらなる発展に力を尽くす覚悟です。
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